2017/04/30

⑦ 継続 continuation

日本の国技に近い野球には、ピッチャーの1球ごとに仕切り直しが入り、攻撃と防御の間にも守備位置からダッグアウトに帰って来たり、ダッグアウトから守備位置についたりといった仕切り直しが入る

バレーボールやテニスみたいなネット型のスポーツなら、サービスでラリーは始まるけれども、どちらかのミスで一旦仕切り直しが入る

アメリカンフットボールも1攻撃ごとにハドルを組んで仕切り直し、4回の攻撃が1セットになってまた攻守交代の仕切り直しが入る

このプレイとプレイの間の「ま」が日本人は好きだったりするのかもしれない

ところがバスケットボールではボールがコートの外に出るか、ルール違反に対してレフリーが笛を吹くかしない限り攻防がとにかく途切れずに継続される

サッカーやハンドボールなんかも攻防は連続するが、それでも得点が入ったら一旦センターサークルでの仕切り直しが入る

そう考えると得点が決まってもとにかくゲームが流れ続けるバスケットボールって、本当に「継続」にその特徴があるんだなぁって思う

じゃあ
練習はどうしてるか? って考えてみると

案外「攻撃だけ」とか「防御だけ」とか「1プレイだけ」とかの単位で練習することが多かったりする
「野球で育った世代」の自分も例に漏れずそういった傾向が強いと思うし
「考えれば考えるほど」その「攻撃か防御のどちらか一面」だけを「真面目に」練習させることがよくある

攻撃だと「シュートを決めて得点をとる」ことが目的だから、「シュートを打つ」までは結構LIVEで戦い合うけれども、よく見ると、本当のゲームだったら「そのシュートを打った後に継続される何か」が「ゲームと同じように」練習されないまま「なんとなくフェードアウト」するような練習になっているケースが、この傾向に該当するんだと思う

攻撃練習中に「ミス」が起こった瞬間に「笛を吹いて練習をフリーズさせる」ことも「実際のゲームだったらそのミスの後に起こる何か」を「発生させないように」練習させていることになる

防御でも理屈は同じ
「シュートを打たせない戦い」まではLIVEでやってるけれども、「シュートを打たれた後の戦い」や「シュートが落ちた後の戦い」あるいは「シュートが入った後の戦い」まで、「ゲームで実際に起こる継続」を意識して練習できていないことが多い

全ての練習を「ゲームのように」練習することは難しいけれども
実際のゲームで起こる継続をどうやって通常の一つ一つの練習の中に仕込んでいくか?
それはコーチもプレイヤーも常に気を使っていなければならないこと

攻撃の練習だったらその後の防御を数秒間だけもゲーム的に仕込んでいく
防御の練習だったらその後の攻撃を数秒間だけもゲーム的に仕込んでいく
それは1on1→5on5までどんな練習でも同じなんだと思う

「ミスの瞬間にフリーズさせる」ことと「ミスの後のリカバリーまでを練習させた後にミスを振り返る」こととのバランスを、コーチが試合の近さによって変えていかなきゃいけないんだろう

「しっかり練習できた」と思ってゲームに臨んだら
「練習したことと練習したこと」の「隙間」や「つなぎ」の部分で勝負が決まったりする苦い経験を、コーチなら誰しも経験したことがあるはず

「攻防のある一面を真面目に練習すればするほど」あるいは「ミスを細かく止めて練習すればするほど」「実はゲームとは違う習慣が身につくように訓練している」「コーチの自己満足」になっていたということに、「試合が終わってから気づく」といったプレイヤーに申し訳なく思い反省する経験を繰り返しながら、コーチもプレイヤーもチームも少しずつ成長していくのかもしれない

バスケットボールの特徴は「継続」にあるからこそ
「試合を変えたかったら練習を変える」しかない
「練習方法には必ずその方法の良さと悪さの両面がある」わけで
「育てたようにしかチームは育っていない」のがコーチングの現実

そんなことをわかった上で「継続にこだわるコーチの工夫」が
「隙間」や「つなぎ」で勝ち切っていくタフなチームの習慣を育てていくんだと思う

バスケットボールは習慣のスポーツ
ゲームでは「いつも通り」のことしかできない


2017/04/27

⑥ 連動 linkage

バスケットボールは5人が一つのチームとなって戦う集団スポーツ
だからゲームを「個の強さ」と「チームの強さ」の両面の視点で見なきゃいけない

「1+1+1+1+1=5のような戦いではなく1+1+1+1+1>5になるような戦い」
「ケミストリー」
なんて書くとなんとなくカッコ良くてわかったような気になるけれども

じゃあそんな「個が集まった集団」が「個の総和以上の戦いができるチーム」になれるような「チームの強さ」って具体的にはどんなことなんなんだろうか

攻撃面なら
「協力してシュートチャンスを創り出せているか」
「協力してプレッシャーリリースできている」
「個の強みを生かすように協力できているか」
「個の弱みを補うように協力できているか」
「個のミスをチームでカバーできているか」
「チームで狙いが共有されて動けているか」
「チームで空間的かつ時間的に合った動きになっているか」
「味方の動きを邪魔するような動きになっていないか」
「味方のシュートを予測してリバウンドやセーフティーに動けているか」
「カバーしてもらった個が次のカバーに動いているか」
 …

攻防は表裏一体なので防御面なら
「協力してシュートチャンスを潰せているか」
「協力してプレッシャーをかけることができている」
「個の強みを生かすように協力できているか」
「個の弱みを補うように協力できているか」
「個のミスをチームでカバーできているか」
「チームで狙いが共有されて動けているか」
「チームで空間的かつ時間的に合った動きになっているか」
「味方の動きを助けるような動きになっているか」
「味方のブロックショットを予測してリバウンドやヘルプに動けているか」
「カバーしてもらった個が次のカバーに動いているか」
 …
などだろうか

Key wordは「連動(Linkage)」
言い換えると「自分の動きと」「味方の動き」が「繋がってる」かどうか

そんな戦いができるチームになるために
コーチにできることは何か?
プレイヤーにできることは何か?
チームで言葉にして共有することから

その今 目の前の練習「繋がってるか?」

バスケットボールは習慣のスポーツ
ゲームでは「いつも通り」のことしかできない

2017/04/23

⑤ 状況判断&意思決定 situation judgment & decision make

バスケットボールは「見て・判断して・プレイする」が大事って言うけれども
これって本当なんだろうか?

バスケットボールなんだから「状況判断」が大事
それはわかる

でも
何かが足りない
というか
何か誤解してるんじゃないか?

ずっとモヤモヤしていた

高速でゲーム状況が変化する近代バスケットボールで、単に「見て(watching)」「判断して(situation judgement)」「プレイ(decision make)」しようとしても、ゲーム状況の変化や複雑さについていけず「先手」なんてとれない

ついていけたとしても
「反射的」に「判断」して「選択」したプレイが
そもそも自分が「意図したもの」や「練習してきたもの」や「強みを生かしたもの」になるかどうかはわからない

それができるのは相当な力の差がある場合だけなんじゃないか

逆に
「場面を正確に認知し、その場に応じた最適なプレイを選択していく」という思考方法をとろうとすればするほど、結果的に選ぶプレイは「場面にはふさわしい」けれども「自分の強みの発揮」とは必ずしも一致しなくなるというジレンマに陥ってしまう

「見て・判断して・プレイする」ってフレーズを無批判に「良い戦術的思考方法である」と受け入れ、その思考方法が習慣化すればするほど、「選択するプレイは状況に適しているかもしれないが、判断と選択という枝分かれを繰り返していく中で、どこか弱い・集中度の低い・練習量の少ないプレイ」になっていく

そうではなく
「まず最初に自分の最も強い・得意なプレイを仕掛ける」って決めた上で
「そのプレイができるのかできないのか」を「見て・判断して・プレイ」したり「そのプレイができる状況になるようになるように逆算で仕掛けていく」といった思考方法でプレイした方が、結果的には自分の「おはこ」に持ち込むことができるようになる

強みを徹底的に仕掛けて
それが100%できないほど完全に抑えられたとしたら
それは軽く裏のプレイを仕掛けることができるということでもあるはず
そうすればプレイはいたってシンプルになる

「何をするかわかってるけれども止められない」プレイヤー
「気がついたら得意なプレイでやられる」プレイヤー
っていうのは
「判断と選択という分岐を繰り返し」「枝分かれした先の正しい選択肢」を「探して」プレイしてるんじゃなく
「自分が最終的にやりたいプレイ」に「なるようになるよう」に「状況を逆算で創り出して」プレイしているんだと思う

「場面に最適なプレイを選択していく」という思考から
「得意なプレイができるように場面を創っていく」という思考へ

④ 読み(予測) anticipationにもあるが
徹底的に先手が取れるように強みであるプレイを仕掛けていくタフさは
思考習慣から見直す必要があるのかもしれない

バスケットボールは習慣のスポーツ
ゲームでは「いつも通り」のことしかできない


2017/04/13

④ 読み(予測) anticipation

バスケットボールでは攻撃でも防御でも「先手」をとろうと思ったら「読み(予測)」は不可欠

目の前に現象が現れる前に「そうなる未来」が見えてプレイしているプレイヤーと
目の前に現象が現れてから「今に反応して」プレイするプレイヤーが戦えば
勝敗は戦う前から明らか

知らない街を自転車で走ると
その角を曲がった先に何があるか……なんて
曲がってみなけりゃわからない

でも
知ってる街ならその角の先に何があるか……なんて
曲がる前から頭の中にある

だから
「危ない」場所も「安全な」場所も「楽しみな」場所も
「見る前からわかってる」

バスケットボールの読みって
そんな街を自転車で走り回ってるのとよく似てると思う

頭の中に街の地図を作るには
とにかく街を走り回っていろんな場所を見て周る根気の要る方法もあれば
最初に地図を買って街の全体像を俯瞰してから確認するように街を走り回る効率的な方法もある

知らない街を走り周るドキドキ・ワクワク感も
それが旅(たび)なら楽しみの一つになるけれど
それがバスケットボールなら話は別

旅を楽しむようにバスケットボールをプレイする
目の前に現れた現実に反射神経してるだけの「いきあたりばったり」のプレイヤーが
ハイスピード&ハードコンタクト化する近代バスケットボールにおいて
地図を持って未来を既に知っているプレイヤーに対して「先手」が取れるとは思わない

だから
日々の練習でプレイの地図を頭の中につくって土地勘を磨かかなきゃ
いつまでたっても試合が旅になってしまう

バスケットボールは習慣のスポーツ
ゲームでは「いつも通り」のことしかできない

2017/04/09

③ 超攻撃的 super aggressive

バスケットボールには攻撃局面と防御局面がある
だから「攻撃的」という言葉は攻撃時に心がけること
そう考えるのが一般的なんだろう

攻撃の目的は
勝ち試合の終了間際には「時間を使うこと」が目的になることはあっても
基本的には「ゴールすること」が第一の目的になる

したがって
全ての「カット」「パス」「レシーブ」「ドリブル」「スクリーン」……は
「ゴールすること」やそのための「シュートチャンスを創り出すこと」に直結していることが理想

ところが実際にはそう単純ではなく(と考えてしまっているだけだが)
ゴールやシュートチャンスの創出に直結しないプレイや
ゴールすることを意識していないプレイがそこら中で発生する

かつて
そういったオフェンスの消極的行動は
ディフェンスの「反撃行動」を生み出す
という稲垣先生の研究論文に出会った
防御側が攻撃側の消極的行動に付け込んで反撃行動にでる!

その時から
「攻撃的」という言葉は攻撃時だけに大切なものではなく
防御時にも必要なんだと思うようになった

では
防御時に攻撃的になるとは一体どういうことなのか?

それはやっぱり
「ボールを奪うこと」を狙うことなんだと思う

「守る」意識で防御していても攻撃側に先手を取られ
対応している間に結局はやられるだけ
そんな「守る」意識を捨てて「攻める」意識を前面に出す

ディナイも「持たせない」ではなく「奪う」
ボールディフェンスも「自由にプレイさせない」ではなく「奪う」
ブロックショットも「打たせない」ではなく「奪う」
ヘルプディフェンスも「カバーする」ではなく「奪う」
リバウンドも「取らせない」ではなく「奪う」

全ての攻撃行動を「ゴールすること」から
全ての防御行動を「ボールを奪うこと」から
見つめ直してみると
「攻撃的」な行動が次々に生み出されていく
そしてそれに「超」がつくくらい徹底的にやる
攻撃練習も防御練習もお互いが「超攻撃的」にやる
そんなバスケットボールの実現を目指したい

バスケットボールは習慣のスポーツ
ゲームでは「いつも通り」のことしかできない

2017/04/07

② ハードコンタクト hard contact

バスケットボールも種目の特性が変わったんじゃないかと思うくらい身体接触が増えてきている。

「タフなゲーム」と「ラフなゲーム」の違いすらよく分からないままフィジカルコンタクトの量と強度だけが上がっている現在のバスケットボール。その波は女子の世界にも押し寄せてきている。それが「いいこと」なのか「わるいこと」なのか現場の一コーチにはわからないが、この傾向がここ10数年とくに顕著になってきていることだけは確か。

そのため「タフ」なチームを作るにはフィジカルコンタクトを「日々」「訓練」することが必要不可欠になる。「カット時」「ポジショニング時」「レシーブ時」「ドリブル時」「フィニッシュ時」「ボックスアウト時」「リバウンド時」「踏切時」「着地時」……ありとあらゆるところでのコンタクトを想定し、それに備えておく訓練が必要になっている。

コンタクトの訓練を怠ると、それが試合中に「ターンオーバー」として現れる。それでもターンオーバーだけで済めばいいが、選手生命を脅かす「大怪我」につながる危険性がある以上、コーチは「タフなゲームを目指しながら、ラフなゲームも戦えるチーム」づくりをする必要がある。

でも、ただ単純に「ぶつかること」「高い強度」「攻防練習」を要求するだけでは怪我のリスクは減らず、逆に練習中や試合中の怪我のリスクは増える。

まずは「怪我のリスクを下げる股関節や体幹の動きを整えること」を「シングルタスク」として「意識すればできる段階」に訓練し、次に「デュアルタスク」として「別な課題を意識していても股関節や体幹の動きが乱れない段階」まで高めていく根気のいる時間のかかる作業を、毎日毎日繰り返していくこと以外に方法はないと思う。

バスケットボールは習慣のスポーツ
ゲームでは「いつも通り」のことしかできない

2017/04/04

① ゲームスピード game speed

練習で要求される「ゲームスピード」

それはただ単純に「トップスピードの速さ」を求めるということではなく
「試合で使う速さ」のこと

そこには
「相手を惑わすわずかなスピードの変化」
「技術を変化できる速さ」
「瞬間的な加速の鋭さ」
「急激なストップや減速」
…などといった多様な視点が含まれている

どんな練習方法であっても
問われるのは
「そのスピードは試合と同じか?」

バスケットボールは習慣のスポーツ
ゲームでは「いつも通り」のことしかできない

2017/04/02

ToughなチームのGood Habitを作り上げる10箇条

ToughなチームのGood Habitを作り上げる10箇条
① ゲームスピード game speed
② ハードコンタクト hard contact
③ 超攻撃的 super aggressive
④ 読み(予測) anticipation
⑤ 状況判断&意思決定 situation judgment & decision make
⑥ 連動 linkage
⑦ 継続 continuation
⑧ 切り替え transition
⑨ ニュートラルボール neutral ball
⑩ 勝ち切る(2回勝つ) win twice

Shadow:相手をつけない動きづくりの練習
Dummy:相手を置いての動きの練習
Decision Make:相手の対応を予め設定しておく判断を伴いながらの練習
Live:制限なしの実戦練習
SDDLのどの練習方法であっても守るべきもの
どれも優劣なく大切なもの


どれか一つでも抜ければ「ぬるい」「ゆるい」「あまい」チームになってしまうもの

目に見える問題に対応することと目に見えない問題に対応すること

問題解決型思考では 目標を明確に設定し 現状を正確に評価したら 問題は眼前に立ち現れてくる と表現する なので問題は「目標値と現在値との差」と定義することができる ということは 問題には ①「あるべき状態を達成しようと取り組んだが悪い結果になってしまった問題」 ②「あるべき状態を...