2021/07/16

目に見える問題に対応することと目に見えない問題に対応すること

問題解決型思考では

目標を明確に設定し
現状を正確に評価したら
問題は眼前に立ち現れてくる

と表現する

なので問題は「目標値と現在値との差」と定義することができる

ということは
問題には
①「あるべき状態を達成しようと取り組んだが悪い結果になってしまった問題」
②「あるべき状態を達成することに取り組んでいない問題」
の2種類があるということになる

①は「やったんだけど失敗したこと」が問題
②は「やらなかったこと」「やれなかったこと」が問題…

①と②はいずれも、あるべき状態と今の状態に差があるという点は同じ

でも
①はいわゆる具体的な失敗だから目につくので認識しやすい

しかし
②は具体的な失敗として目の前に現れてこないから「脳内であるべき姿を映像として流しながら目の前の現象を観察する」というか「目標の像と実際の像の2画面を重ねて違いを見抜く観察」ができない限り絶対に認識できない

そのため
問題解決は一般的に①への対応に偏ってしまうことが多い

目の前に具体的な①の問題が現れることは、スポーツ指導の場に限らず、仕事や日常生活の場の中でも頻繁に発生する

だから
①の問題に対応するときは、「今目の前に現れていない②の問題があるかもしれない」「今目の前に現れていない②の問題を解決したら、今目の前に現れている①の問題はそもそも起こらないかもしれない」などの可能性を検討した上で、「今目の前に現れてる①の問題に対応すること」の意義や重要性や必要性が認められる場合に①の問題に対応し始めるといった思考の習慣をつけたい

そうしないと
次から次へに現れる問題の渦に巻き込まれ、「問題だ問題だ……」ってなってしまう

問題解決力が高いという自己効力感があるほど、無意識に悪循環にはまり込んでしまう危うさがあることを理解しておく必要があるなと思う



2021/06/25

無意識の力って凄い

スポーツに限らず、無意識の持つ力について学ぶことはとても大切なことだなと感じる

まず自分の中に二人の自分がいると仮定する
①考える自分(意識)
②動く身体(無意識)

いろんな事を考え、悩み、迷うのは①の自分
実際にスポーツの中で動いているのは②の身体

時に①は②の動きの邪魔をする
①が自分にコントロールできない未来や過去や他者の事を考えている時
②は必要な情報が入ってこないために持っている力を発揮することができない

あるいは
①が②の動きをコントロールしようとする時
②の動きは自動化が切られ、ぎこちない動きとなってしまう
①は「歩く」や「字を書く」といった簡単な行動ですら完全にコントロールすることはできない
甲子園球場の入場行進で手と足がそろって不自然になるのは①が②をコントロールしようとした結果起こること
本来は全て②が自動的に行なっていることに①が口を出すとこうなる

①の意識が必要な五感「視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚」の扉を開くことだけを考え
必要な情報が入ってくるようにだけしておけば
②の身体はその情報をうけとって自動的に動いてくれる

スポーツにおける「無心」「ゾーン」「フロー」というのは
①が不要な思考を停止し必要な五感の扉を開くことだけを意識している状態で
②の身体が①の邪魔を受けずに自由自在に動けている状態のことなんだと思う

また、①が話す言葉を②は聞いている
さらに、①の考える事を②は黙って了解している
そして、②は①の言葉や考えを「現実化」しようとする

だからナポレオン・ヒルが言うように「思考は現実化する」ことになる

だったら、ネガティブな言葉を唱えたり、考えたりするよりも
ポジティブな言葉を唱えたり、考えたりすることの方が大事

そうすれば、自分が何を言うか、何を考えるかという
意識できることをコントロールすることで
コントロールができない無意識にアプローチしていることになる

言葉を変えれば
意識的に無意識をコントロールする方法ということになる

それが正聞熏習(しょうもんくんじゅう)






2021/06/20

「狙って出した正の成果」と「予想せずに出ている負の効果」に気づくこと

トレーニングは目的をもって行うもの

だから「出したい成果」が先にあって「そのための手段」を準備するという順に考える
当然、トレーニング手段を実施した後は「出したい成果」が出ているかを必ず確認するもの

でも、そのトレーニング手段を実施したことによって「予想していなかった負の効果」で出ていることに気づくことは案外少ない

たまに「予想していなかった正の効果」が現れて
結果オーライなんてこともあったりする

コーチとしてこの「狙って出した正の成果」と「想定外に出た負の効果」と「想定外の正の効果」の3つを正確に評価する力というか思考というか習慣が必要だと思う

トレーニングは、刺激を与えて適応を意図的に引き出す行為だが
トレーニングによって与えられる刺激は、狙った刺激だけに限定されるものではなく
狙った刺激以外にも多様な刺激を持っているはず
そうすると適応は狙った刺激以外の刺激によっても当然引き出されているはず

コーチには「出したい成果」「引き出したい適応」っていう認知バイアスがかかるから
どうしても「想定していない成果」「想定していない適応」についての認知は甘くなる

「想定外の正の効果」はコーチにとっては大歓迎だし
勝ちに不思議の勝ちあり」なんていうのは「想定外の正の効果」もその一因なのかもしれない

逆に「負けに不思議の負けなし」の一因になるような「想定外の負の効果」は常に意識して見極める習慣をつけておかないと「終わってから気づかされる」ことになる…

自分自身「通り過ぎてから気づいた」ことは山のようにあり
プレイヤーに対して言葉では言い表せない自責の念を何度も感じてきた

アシスタントコーチを得た2020シーズンからは
この「自分には見えにくい想定していなかった適応」をアシスタントコーチの目を通して意識的に確認するようにしている

そうすることで自分自身の認知バイアスを修正し
自分で3つの成果を見極められるように訓練していきたいと思う

2021/06/10

速さは技術だ!

球技スポーツにおいて「プレイ速度が速いこと」はそれだけで優位性がある
だからコーチもプレイヤーも「速く!」を強調して指導あるいはプレイすることが多い

25年以上前だが、大学女子バスケットボール界で当時最も速いバスケットボールを実現していたあるベテランコーチから「速さは技術だ!」と教わった

そのコーチは
「……チームはただ速いだけだ」
「……チームは速いだけで勝ってる」
「そりゃあれだけ走らせてたらそうなるよなぁ……」
「なんてよく言われるけど」

「だったら同じ速さでプレイしてみろ(させてみろ)」
「速くプレイしようとしたら一体何が起こるか……そう言うことを言う奴は本気でトライしたことないんだろ」
って感じでサバサバしてる

「速さは体力」ではなかった

自分もコーチとして「速いプレイ」を今でも追求をしているが
どうしても「速く」は「急ぐ」とか「慌てる」になるし
「正確な判断」や「よい選択」ができなくなり「未確認」で「止められないプレイ」になったり「シュートの精度が落ちる」といったことが多発する

また、そもそも論として「速く動くこと」は「スピードが速いこと」よりも
「加速度が高いこと」って感覚なのでプラスの加速度とマイナスの加速度があるわけだから
当然「急激に加速すること」と「急激に止まること」の両方が求められる

自動車でも「最高速度を上げる」ためには「ブレーキの性能を上げること」が必須だし
「ボディーの剛性を高める」ことも急激な加速/減速に耐えるためには必要不可欠な要素

速度を上げればそれだけ自動車のドライバーには「判断の速さ」と「判断の早さ」が要求されるし
高速運転中のハンドル操作には極めて高い熟練度が求められる
急激なハンドル操作は車の不安定さを生み出し大事故を引き起こす

高速で走る中では「時間的な制限」から「すべての情報源」に視線を向けることはできないので
「必要な情報源に視線を向け」「起こった時の対処法」とセットで「起こりうる可能性を常に先取りしながら」頭は高速回転している

また高速で走る中では「物理的な制限」によって「視野は狭くなる」から余計に「選択的注意」の精度の高さが求められる

毎年毎年「速さ」を追求していくなかで
「あの速さに到達できたかな」って思える日が1日でも早くくるように
加速力と減速力/体幹/スキルの精度/選択肢の精選と優先順位づけ/選択的注意/判断基準/早さ/…
そういったものを日々磨いていきたい

そして「速さは技術だ!」って自信を持って言えるコーチに自分もなりたいと思う

2021/06/01

自分の動きを主観的に観察することと客観的に観察すること

コロナ禍で大学の授業はオンラインが多い
昨年度前期は全ての授業がオンラインだった
実技のバスケットボール授業もオンライン…

今年度はバスケットボール実技を4月から対面でやれてたが
4月25日緊急事態宣言の発出により一旦オンラインに移行こせざるを得なくなった

じゃあどうするか…となるんだが
そこは昨年度構築した「オンラインスキルテスト」実施に切り替える

毎週
①指導資料(PDFファイル)と解説映像(Youtube動画)の提示
→②提出課題の説明映像提示(Youtube動画)
(撮影方法、評価の観点と基準、提出方法)
→③各自が自分で練習
(時間と場所は様々、課題は基本的にボールを使わない動きだけのシャドウ)
→④自分の動きをスマホで動画撮影して自分で評価の観点と基準を確認
→⑤できてると判断したら提出
という流れ

ゴールデンウイーク明けから4週間のオンライン期間を経て
6月に入り感染症対策を行なった上で対面授業を再開した

まずは
オンラインスキルテスト課題を実際のコートでボールを使って実施してみた

その結果は……
「対面授業だけの時よりも動きがいい!」

結局、学生自身が動きのメカニズムとその運動経過の中にあるポイントを指導資料と解説映像から見抜き
自分の動きを映像によって客観的に自己観察したことが
動きの学習にとて効果的な機会になったということ

対面授業だと動きの良否を私が評価することが多く
私は教えたつもりになり、授業してる!って満足感はあるが
案外学生は受動的な学びになってるんだろうなと思う

オンラインスキルテストだと
学生が自分の動きに意識を向ける主観的な自己観察と
学生が自分の動きを外からみる客観的な自己観察とを
行ったり来たりすることになり
主観的な自己観察と客観的な自己観察を行ったり来たりしながら
結果的に学生は能動的な学びになるんだろうと思う

実技はオンラインよりも対面の方がいいに決まってる
でもオンラインにはオンラインの良さがあり
両方を足したら対面授業はもっと良くなる

全ての出来事は成長の機会になる!
学生にとっても教員にとっても

改めてそう思う




 

目に見える問題に対応することと目に見えない問題に対応すること

問題解決型思考では 目標を明確に設定し 現状を正確に評価したら 問題は眼前に立ち現れてくる と表現する なので問題は「目標値と現在値との差」と定義することができる ということは 問題には ①「あるべき状態を達成しようと取り組んだが悪い結果になってしまった問題」 ②「あるべき状態を...