2012/04/21

積極的な反応と消極的な反応

同僚先輩の習慣を真似て始めた入浴読書がずっと続いている。
今は、司馬遼太郎著「関ヶ原」を読んでいる。

その下巻 p.207
敵の疲労を想像して夜襲を思い立つという積極的な反射ではなく、敵の放火をみて自城の防御を思い立つという消極的な反射では、戦では主将の反射がするどければ鋭いほど受け身になり、ついには窮地に追い込まれてしまう。
戦は,頭脳と勇気と機敏さの仕事だが、その三つが揃っていてもなにもならない。
(中略)
三成の場合、その三つは信長、秀吉とさほど劣らぬであろう。しかし致命的に違うのは、三つを載せている資質だった。受け身の反応なのである。

10代で初めて読んだ大作「竜馬がゆく」
30代で読んだ「坂の上の雲」
40代で読んだ「覇王の家」
そして今読み進めている「関ヶ原」

いずれにも司馬遼太郎が想う様々な「将」としての在り方が綴られている。
読む自分自身の年齢や立場や責任の変化に重ね合わせながら、いつも書の中に「将とはいかにあるべきか」を探している気がする。

昨日、10年来お世話になっている高校の先生と久しぶりに電話で話をする機会があった。「Blogどうして止めたの」って話になった。『坂の上の夢』に時折目を通していてくださっている先生。SMSでコメントを頂いたこともある。

チームを育てること、学生を育てること、バスケットボール界の発展を目指して仕事をすること、そんな日常の中で感じたり考えたりしたことを「ことば」にして発信してきた。ことばを頭の中から体の外に出して綴っていくことで、自分自身の頭が整理されることも多かった。

有為な女性スポーツ指導者を育成することが目的の実技授業の中では、「頭でわかっていること」と「実際にできること」は全然違うよ。「自分ができること」と「人をできるようにさせること」もまた全然違うよ。「頭でわかっただけで、できた気になったり、伝えられる気にならないで、できない人を本当にできるようにさせることができる指導者になってください」って話を日々学生にしている。

しかし、チームの育成や学生の教育、バスケットボール界としての仕事や教員としての仕事の中で、いろんな意味で自分の描く目標や理想に届かない現実、遠く及ばない自分自身の現実の力量、学生気質の変化、自分自身の言行不一致さや、有言不実行さなど、様々なことに嫌気がさし、ことばを発することをやめていた。

「でもね、苦労や迷いであっても、それを『ことば』にして発信してくれていたら、同じような環境の中で頑張ってる人のヒントになったり、共感できたり、勇気づけになったりすることもあるんじゃない」っていう先生の言葉に、消極的な反応が自分自身に生じていたんだなあって改めて感じた。

明日から新年度の公式戦がスタートする。
「戦いの場において将の積極的な反応」が生まれるよう、姿勢をただし、表情をただし、声をただし、目の前の現実と積極的に向き合っていこうと思う。

1 件のコメント:

  1. はじめまして。
    某地方大学で、女子バスケットボール部の監督をしている者です。
    先生とは面識がありませんが、先生と同じ大学出身の後輩の1人です。(面識はないのですが、昨年のインカレ観客席で、試合観戦をしていたところ、次戦の対戦相手をスカウティングするためにたまたま先生が私の隣に座りました。近くにいた学生にポイントやプレーのアドバイスなどを話していて、私は試合観戦そっちのけで先生の話に聞き耳を立てていました(笑))

    いつもこのHPを拝見して、先生の言葉に勇気づけられ、チームのヒントになり、人を育てることの難しさを実感し・・・と色々な意味で、教科書のようなHPだと思っていたので、再開していただけて、本当に嬉しいです!

    先生にも、『ことば』にできない葛藤もあると思いますが、私のようにこのHPを指導者の教科書のように感じている者がいるということを知っていただきたく、初めてコメントさせていただきました。

    今後ともご活躍を楽しみにしておりますので、お身体にお気をつけてガンバってください!

    私も指導者として、先生に少しでも追いつけるよう頑張りたいと思います。
    今度、機会がありましたら、ご挨拶させていただきたいと思いますので、その際はどうぞよろしくお願いいたします。

    突然のコメント、大変失礼いたしました。

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